愛知県岡崎市。徳川家康の生誕地として知られるこの城下町には、時代を超えて愛され続けてきた食の名所がいくつもあります。八丁味噌の蔵が立ち並ぶ乙川沿いの風景、岡崎城のお膝元に広がる康生通り商店街、そしてその一角に、今日もひっきりなしに人が訪れる老舗和菓子屋があります。それが「御菓子司 和泉屋」です。
商品の価格・種類などは取材日のものとなっています。
和泉屋の場所

| 店名 | 和泉屋 |
|---|---|
| 場所 | 〒444-0059 愛知県岡崎市康生通西2丁目6−6 |
| 定休日 | 水曜日・第三火曜日 |
| 営業時間 | 9時30分~18時00分 |
朝、シャッターを開ける前から何人かのお客さんが待っているという光景は珍しくなく、休日ともなれば、遠く離れた信号機のところまで行列が伸びることもあるといいます。シャッターが閉まったままのお店も目立つ昔ながらの商店街の中で、ここだけはいつも活気に溢れている。そんな特別な存在感を放っているのが和泉屋です。
アクセス・駐車場情報

東岡崎駅から徒歩12分。
駐車場は道路の向かい側に6台分あり。
和泉屋ってどんなお店?

和泉屋の由来
和泉屋の創業は1932年(昭和7年)のことです。2026年現在で創業から94年という、まさに老舗中の老舗。先代は安城市和泉町(当時の名称)出身で、「より良い材料を使い、よりおいしく、よりお値打ちに」という揺るぎないモットーを胸に、岡崎の地で商いを始めました。この「和泉屋」という屋号は、先代の出身地・和泉町に由来しています。
創業当初、和泉屋が扱っていた商品はたった一種類——それが「一銭餅」と呼ばれるお餅でした。文字通り一銭で買える庶民的なお菓子です。昭和初期という時代背景の中、多くの人が手を伸ばせるお値打ちな価格で、おいしいものを届けたい——その思いが、和泉屋の出発点でした。
和泉屋のおすすめ商品
看板商品「みたらし団子」――岡崎市民の魂のおやつ
和泉屋と言えば、まずはこれを外すことができません。みたらし団子です。年間を通じて不動のナンバー1であり続けるこの商品は、70年以上にわたって販売されているロングセラー。「和泉屋のみたらし団子」は岡崎市民にとって、「定番のおやつ」の代名詞といっても過言ではありません。

一般的なみたらし団子は、ぷっくりとした球形のお団子が串に刺さったものですよね。しかし和泉屋のみたらし団子は、球をつぶしたような平べったい形が特徴的です。
平べったい形にすることで、火の通りが均一になりやすく、またタレが絡みやすいというメリットがあるのです。職人が一つひとつ丁寧に生地から手作業で成形し、気候やその日の気温によって手触りで調整しながら仕上げていきます。機械ではなく、職人の「手」と「感覚」が生み出す品質管理——それが毎回変わらないおいしさを保つ秘訣です。
おはぎ――看板商品のひとつ
みたらし団子と並ぶ看板商品のひとつがおはぎです。北海道十勝産の小豆を使用し、塩気のきいた餅米に、味付けした北海道産のきなこをまぶした一品。甘さの中に感じる塩気が絶妙で、一口食べると「あ、これだ」という既視感のような懐かしさを覚えます。きなこのふんわりとした香りと粒あんの風味が重なり合い、多くのお客さんが「たまに無性に食べたくなって買いに来る」と話します。
オカザえもんどら焼き――岡崎愛が生んだコラボ商品

オカザえもんどら焼きは、岡崎市の人気キャラクター「オカザえもん」とのコラボレーション商品です。「地元岡崎を元気にしたい」という思いから生まれたこの商品は、希少な北海道産白小豆のあんに、京都丹波産の黒豆を加えたどら焼き。オカザえもんの「白と黒」のいでたちが、白小豆と黒豆で表現されているという遊び心も秀逸です。
なんと日経新聞が行ったゆるキャラスイーツランキングで全国5位に輝いた実績を持ちます。パッケージに書かれた「和泉屋殿のどら焼きは絶品でござる」という文言や、オカザえもんのプロフィールも楽しく、岡崎土産として大変人気があります。
赤飯おにぎり
佐賀県産のヒヨクモチを使用した赤飯おにぎりも、和泉屋の看板商品のひとつ。ヒヨクモチならではの程よい弾力と甘みが特徴です。おやつとしてはもちろん、軽食として食べていく人も多いこの商品は、まさに「和菓子屋さんのおにぎり」という特別な魅力があります。

蒸しカステラ――創業来80年変わらぬ味
蒸しカステラは、昔ながらの蒸しパンのようなカステラで、なんと鶏卵を使用していないという特徴があります。そのため卵アレルギーをお持ちの方でも安心して食べることができます。80年変わらず皆様に愛され続けているというこの商品は、和泉屋の歴史そのものともいえる一品です。
ういろ
ういろも創業当時からある商品のひとつ。もちもちとした食感は時代が変わっても人気を集め続けています。シンプルな味わいながら、その素朴さこそが子どもから高齢者まで広く愛される理由でしょう。
金のかすてら
通常のカステラよりも卵黄をたっぷり使用することで、コクのある豊かな風味に仕上げた金のかすてら。「蒸しながら焼き上げる」という新製法によって、ふっくらとしたしっとりした食感が実現しています。名前のとおり、黄金色に輝く断面が食欲をそそります。
餅パイ
和菓子屋らしからぬ「パイ饅頭」という発想が生んだ餅パイは、発酵バターを使用したコクのあるパイ生地の中に、モチモチ食感のお餅と粒あんが入った一品。サクサクのパイ生地とモチモチのお餅、そして甘い粒あんが三つ巴になる食感は、一度食べたら忘れられない特別感があります。スタッフイチ押しの商品でもあります。
かりんとう饅頭
かりんとう饅頭は、沖縄・波照間島産の黒糖で作った自家製黒蜜で黒糖まんじゅうを作り、米油でじっくり揚げた一品。サクサクとした食感で、食べやすい形に仕上げられています。外はカリカリ、中は黒糖の甘い香りが広がる……和菓子と揚げ菓子の美味しいところをぎゅっと詰め込んだような存在感があります。3代目の啓介さんが手がけた商品のひとつで、岡崎商工会議所の会報でも紹介されたほどです。
みたらし団子だけが和泉屋ではありません。ショーケースにはずらりと個性豊かな商品が並び、どれを選ぼうか迷ってしまうほどです。
季節の和菓子――四季折々の美味しさ
和泉屋の真骨頂のひとつが、季節限定商品の豊富さです。四季を感じながら食べる和菓子——それこそが日本の食文化の豊かさであることを、和泉屋の商品棚を眺めるたびに実感させられます。
春の商品

春になると登場するのが、まずさくら餅。桜の葉の塩気とあんこの甘さが絶妙にマッチした、春の代表的な和菓子です。和泉屋のさくら餅は関西風のものが基本で、もちもちとした道明寺餅の食感が楽しめます。
そして三河地方ならではの和菓子として特に注目したいのがいがまんじゅうです。ひな人形に飾られる三河地方の伝統的なお菓子で、モチモチのお餅に粒あん・こしあんのバージョンがあり、色のついた粳米がついた独特の見た目が特徴的です。この地域に根付いた文化を和菓子で伝えるという視点が、和泉屋らしいこだわりです。

夏の商品――SNSで爆発的話題の「くず餅バー」
夏といえば、いまや和泉屋の代名詞とも言えるほど有名になったくず餅バー(1本税込約220円)を外すわけにはいきません。
アイスバーのような見た目でひんやりとしているのに、夏の暑い時期でも溶けないという不思議な食べ物——それがくず餅バーです。くずを使った和菓子ならではの弾力ある食感が、アイスとは全く異なる「やわもち」体験を生み出しています。溶けないので小さな子どもが食べても安心なうえ、口の中でじっくりと味わえるのも特徴です。
フレーバーは抹茶ミルク・桃・ブルーベリーヨーグルトの3種類。特に桃は地元産の生の白桃が丸ごと使われており、毎年桃の仕入れを心待ちにしている常連さんも多いとか。あるお客さんは一度に60個も購入したというエピソードも残っており、そのファンの熱量は相当なものです。SNSで話題が広がり、岡崎市内のみならず県外からも「くず餅バーを食べに来た」というお客さんが訪れるようになりました。
夏には他にも、水まんじゅう・わらび餅・すもも大福・くずまんじゅう・あんみつ・冷やしぜんざい・若鮎など、涼やかな和菓子が数多く並びます。特にすもも大福は、甘みと酸味のバランスが絶妙で夏の大人気商品として知られています。

秋の商品――栗づくし
秋になると、和泉屋は「栗」の世界に染まります。栗きんとん・栗かすてら・栗蒸し羊羹・栗おこわ・和栗deシュー・和栗ぷりん・モンブラン大福など、栗を使ったバリエーション豊かな商品が揃います。
中でも特に人気が高いのが和栗deシュー。サクサク食感のシュー生地に、自家製栗きんとんクリームをたっぷり詰め込んだ一品で、秋の看板商品として毎年多くのファンが心待ちにしています。またモンブラン大福は、小豆入りのムースを極限まで柔らかく仕上げたお餅で包み、自家製モンブランペーストを絞ったもの。洋菓子の「モンブラン」を和菓子の文法で再解釈した、3代目らしい創作性が光ります。
秋の限定商品として、ぶどう大福も大変人気があります。種なしで皮ごと食べられるナガノパープルを使用し、酸味と甘さの絶妙なバランスが魅力。秋の短い期間だけ食べられるという稀少感も、ファンを惹きつける要因のひとつです。
冬・いちごの季節の商品
冬から春にかけては、いちごを使った商品が主役に躍り出ます。いちご大福は、当店独自の製法で極限までふわふわに仕上げた羽二重餅と自家製白あん、そして契約農家さんの「紅ほっぺ」を組み合わせた看板商品。「幸福感間違いなし」というキャッチコピーに偽りなし、と多くのファンが絶賛します。
生いちごdeシューは、生クリームと白あんと大量のいちごで作った濃厚クリームをパリパリ食感のシュー生地に詰め込んだ一品。和菓子屋ならではの白あんという隠し味が、ただのシュークリームとは一線を画す深みある味わいを生み出しています。
よくばり大福は、苺・栗・クリームチーズを粒あんで包み、さらにふわふわのお餅で包んだ、まさに「欲張り」な大福。クリームチーズの酸味と粒あんの甘さが意外なほどよく合い、洋菓子好きにも和菓子好きにも愛される一品です。
生ちょこ餅は、ベルギー産の高級クーベルチュールを使用して極限まで滑らかな生チョコに仕上げ、求肥で包んでからココアパウダーをまぶした洋和折衷の逸品。バレンタインの時期に特に人気が高まります。
そして冬のひそかな名品が寿老餅。高級な市田柿の中に栗きんとんを入れ、外側を羊羹でコーティングした贅沢な一品で、縁起物としてギフトにも最適です。
和菓子屋でおでん!? ユニークなイートインスペース
和泉屋の魅力は和菓子だけにとどまりません。和菓子の陳列棚の奥に広がるイートインスペースが、このお店の唯一無二の個性を生み出しています。
昭和レトロな雰囲気漂うこのイートインスペースでは、和菓子はもちろんのこと、おでん(関東煮)やみつまめ・田舎しるこなどを食べることができます。一見すると和菓子屋というよりも食堂のような雰囲気で、地元の常連さんがおしゃべりしながら気軽におでんをつまんでさっと帰っていく——そんな日常の風景が、ここでは毎日くり広げられています。
岡崎の「関東煮(かんとに)」文化
岡崎ではおでんのことを「関東煮(かんとに)」と呼ぶ文化があります。東海地方独特のこの呼び方を知るだけでも、この地域の食文化の奥深さを感じることができます。和泉屋の関東煮は、厚あげ・こんにゃく・じゃがいも・海苔はんぺん・玉子など15〜20種類のネタが揃い、1本あたり約150円(店内飲食価格)からと手頃な価格です。
熱々のおでんは、しっかりと出汁が染み込んでおり、「ほっこりする味わいで心も身体も温まる」と多くの方が感想を書き寄せています。和菓子を買いに来て、ついおでんも食べていってしまう——そんなお客さんが後を絶ちません。
壁には東海オンエアや芸能人などのサインがたくさん

テレビや雑誌などのメディアにも何度も取り上げられ、店内の壁には有名人のサイン色紙がいっぱい並んでいます。

テンプレートが登場した東海オンエアの動画
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姉妹店・兄妹店の展開――和泉屋ファミリーの広がり
長年にわたって地域から愛されてきた和泉屋は、本店だけに留まらず、ファミリーを広げています。
おとぎの蔵 豆の樹(2017年オープン)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 住所 | 〒444-0874 愛知県岡崎市竜美南2-6-11 |
| 電話番号 | 0564-77-7000 |
| 営業時間 | 9:30〜18:00 |
| 定休日 | 水曜日・第一・第三火曜日 |
| アクセス | 東岡崎駅南口から車で5分 |
| 駐車場 | 15台あり |
| 通販サイト | mamenoki.shop |
2017年10月、3代目の啓介さんが中心となって、和泉屋の姉妹店「おとぎの蔵 豆の樹」がオープンしました。場所は岡崎市竜美南、東岡崎駅南口から車で5分ほどのところです。
「昔から日本に伝わるおとぎ話をモチーフにした様々な和菓子を販売しています」というコンセプトのこのお店は、本店・和泉屋とはひと味違う、夢のある世界観を大切にしています。桃太郎どら焼き・浦島太郎どら焼きなど、おとぎ話にちなんだユニークな商品が並び、子どもから大人まで楽しめます。
また、豆の樹ではネット通販も行っており、全国どこからでも和泉屋ファミリーの味を楽しめるようになっています。オカザえもんどら焼き・かりんとうまんじゅう・生どら焼き・黒豆塩大福など、和泉屋の人気商品もオンラインで購入可能です。
花の菓 そらまめ(2024年オープン)
さらに2024年12月3日には、3店目となる「花の菓 そらまめ」がオープンしました。「和泉屋・おとぎの蔵豆の樹の兄妹店で、だんご三兄弟の末っ子」という愛らしい自己紹介とともに登場したこの新店は、脱サラして和菓子の道に飛び込んだという経歴も話題となりました。
3店それぞれが個性を持ちながら、「おいしいものをお値打ちに」という和泉屋の根幹の精神を受け継いでいる——これが和泉屋ファミリーの最大の強みです。
和泉屋明大寺店は閉店
東岡崎駅近くにも和泉屋がありましたが、残念ながら2021年12月30日(木)に閉店しています。

